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vol.16 テンパリング

"失敗"から学ぶ、成功する基本のお菓子

第16回目はチョコレートの「テンパリング」。
難しいと敬遠されがちなテンパリングですが、温度計で確認、チェックしながら行えば大丈夫。
今回は正確な温度管理をすれば家庭でも失敗が少ない、ウォーターメソッド(水冷法)でのテンパリングをご紹介します。
「固まらない」「表面に模様(ブルーム)ができる」という失敗がないよう、いくつかのポイントをマスターしましょう。

テンパリングとは

テンパリングとは、溶かしたチョコレートを冷やし固めるときに、チョコレートに含まれるカカオバターの結晶を最も安定した結晶型に統一する温度操作のことを言います。
テンパリングの目的は、

・光沢のあるチョコレートにする。
・パリっとした硬さと収縮性を得る。
・くちどけを良くする。

の3つ。
単に溶かして固めただけのチョコレートは、不安定な結晶型で固まるため、適正な硬さや収縮性がなく、ぐにゃっとした食感、型から外れない、ツヤがない、くちどけが悪い、ザラザラしているなど、チョコレート本来の特性を失ってしまいます。

テンパリングのよくある失敗

固まらない

・固める温度が高い
・温度調整できていない

表面に模様(ブルーム)ができる

・水分が混入した
・温度調整できていない
・保存中の温度、湿度が適切でない

失敗しないテンパリング方法

スイートチョコレートのテンパリング方法をご紹介します。
ミルク、ホワイトチョコレートのテンパリングについてはこちらを参照ください。

所要時間…30分
保存…冷暗所で保存

材料

チョコレート…500g

【おすすめのチョコレート】

ベルギーのカレボー社のクーベルチュールチョコレート。タブレット状なので溶かすのに便利。中でもNo3815は流動性があるため、テンパリング後のコーティング作業などに最適です。

【失敗の原因】

チョコレートは、最低200gは用意する。量が少ないと温度変化が激しいため、慌ててしまって失敗の原因に。できれば500gくらいあると安心。
また使用するチョコレートの保存状態が適切でなかった場合、例えば温度変化が激しく劣化してしまったチョコレートを使用するのはNG。冷蔵庫に入っていた冷たいチョコレートは一度室温に戻してから使用する。

下準備

・チョコレートを刻む

板状のチョコレートの場合は、溶けやすいようにナイフで刻んでおく。

水冷法によるテンパリングの方法

1.ボールにチョコレートを入れて湯煎で溶かし、45℃~50℃にする

同じ大きさのボールを2つ用意し、片方に熱いお湯を入れ、その上にチョコレートを入れたボールをのせてゆっくりと溶かす。10分程度放置した後、ゴムベラで混ぜる。

途中、湯煎の温度が下がり、チョコレートがなかなか溶けない場合にはお湯を入れ替えるとよい。
チョコレートの粒がなくなり温度が45℃~50℃になればOK。

【失敗の原因】

火をつけたままの鍋やフライパンの上にチョコレートを入れたボールをのせて溶解した場合、チョコレートがあっという間に溶けて50℃以上になり、長時間放置することでチョコレートが焦げたり、油分が分離したり、本来もつチョコレートの口溶けの良さや風味を失ってしまう。お湯の温度は60℃くらいを目安にゆっくりと溶かすのがよい。

同じ大きさのボールを使うことで、湯気(=水分)がチョコレートに入らないようにする。湯煎の量にも注意が必要。あまりたくさんのお湯を入れるとお湯が溢れてチョコレートのボールに入ってしまうので気を付ける。

チョコレートと水分

チョコレートに水分が付着すると、チョコレート中の砂糖が水分に吸収され溶けだし、その水分が蒸発したあと溶けていた砂糖が白い結晶となってチョコレートの表面に白い模様ができる。(シュガー・ブルーム現象)

2.チョコレートを27℃まで冷却する

湯煎のボールを氷水に入れ替え、ゴムベラで混ぜながら冷やす。

【失敗の原因】

氷水はチョコレートの入っているボールの底を冷却できる量でよい。チョコレートが入っている量より冷水が上になると、ボールに水滴ができて水分の混入となるので注意。

氷水につけっぱなしにすると、底から固まりはじめたチョコレートが粒や塊になってしまうので、5秒程度つけて外すを繰り返し、混ぜながら冷やしていく。

チョコレートが安定した結晶を作るための条件は温度調整の他に「混ぜる」という作業も大切。ただしあまり激しく混ぜると気泡が入るので注意が必要。

3.チョコレートがきちんと固まるかチェックをする

27℃まで冷却したチョコレートをカードやパレットナイフに少量付けて状態をチェックする。(結晶化のチェック)
チョコレートがなかなか固まらない場合は、混ぜながら温度を下げて(26℃、25℃)再度チェックする。

【失敗の原因】

温度が下がって結晶化が進むとチョコレートのダマや塊ができる。小さなダマは次の工程で溶かすことができるのでOK。大きな塊ができてしまうと1からやり直しになるので、濃度がついてきたら氷水からはずし混ぜながら温度を下げるのがよい。

4.ドライヤーを使って、31℃~32℃にする。安定した結晶型に統一する

27℃では安定した結晶型のほか、不安定な結晶型も混在している。31℃~32℃に温度を上げることで不安定な結晶が溶け、最も安定した結晶型だけが残る。

【失敗の原因】

温度を上げる際、うっかり上昇しすぎて34℃以上になるとせっかく作った結晶型が溶けてしまい、1からテンパリングのやり直しという悲しい結果に。湯煎で温度を上げる方法もありますが、ドライヤーを使って温めると、ゆっくりと温度が上がるので失敗が少なくおすすめです。

5.テンパリング完了

テンパリングしたチョコレートを固めた場合、完全な結晶化になるにはある程度の時間がかかる。そのため固まってすぐに表面に現れることもあるが、綺麗に固まって成功!と思ったら、翌日白い模様や斑点が浮き出てくることもある。(ファット・ブルーム現象)

画像は温度による固まり方の違い。

ファット・ブルームは、不安定結晶が表面に現れる現象で、ブルームの生じたチョコレートは口溶けが悪く、チョコレート本来の特性を失っている。

綺麗な作業を心がける

テンパリングをしていると、いろんなところにチョコレートが付着してキッチンが汚れがち。ボールのフチについたチョコレートもキッチンペーパーなどでふきとりながら作業するとよい。

残ったチョコレートの再利用

テンパリングしたチョコレートが余った場合は再利用可能。クッキングペーパーの上に流して薄く平らにのばし、固まったあとに包丁で刻んで袋に入れておくと、次回使用する際に便利。
再度テンパリングすることはもちろん、ブラウニーやガトーショコラなどのチョコレートケーキにも利用できる。

ミルク、ホワイトチョコレートのテンパリング

基本的なテンパリング方法はスイートチョコレートと同じ。
ただしミルクが入っているため、タンパク質の性質にも注意が必要となる。特にチョコレートを溶かす際は、温度が上がりすぎないように温度管理をしっかり行うこと。加熱しすぎると、焦げたり、タンパク質が変性して流動性がなくなるので注意。

チョコレートの種類によって、各工程ごとの温度が異なるので注意が必要。

チョコレートを使ったレシピ

テンパリングをしたチョコレートを使ったレシピをご紹介します。

マンディアン

<材料>トレー4枚分
テンパリングしたスイートチョコレート 200g
セミドライいちじく
セミドライアプリコット
ヘーゼルナッツ
ピスタチオ


1.テンパリングしたチョコレートを型に流す。(1枚に50g)
2.チョコレートが固まる前に、好みの大きさにカットしたドライフルーツ、ナッツをのせる。
3.完成

<ラッピングアイテム>
スリーブケース
ゴールドトレー
オーピーパック

ロッシェ

<材料>
テンパリングしたミルクチョコレート 200g
アーモンドスリーバード 150g

1.テンパリングしたチョコレートにアーモンドを加えて混ぜる。
2.クッキングペーパーの上にスプーンで落として固める。
途中、ボールの中のチョコレートが固まってきたらドライヤーで温めるとよい。
3.完成

チュイル・ショコラ

<材料>
テンパリングしたミルクチョコレート 100g
アーモンドダイス 60g

1.テンパリングしたチョコレートにアーモンドを加えて混ぜる。
2.クッキングペーパーの上にスプーンで丸くする。
途中、ボールの中のチョコレートが固まってきたらドライヤーで温めるとよい。
3.固まる前にめん棒などの上にのせて、形を作る。
4.完成

筆者紹介

sweetribbon

隈部美千代

東京・門前仲町にて、2006年7月より「贈るお菓子」をテーマとしたお菓子教室Sweet Ribbon主宰。お菓子作りを通して、手作りの楽しさや贈る喜び、優しい豊かな気持ちを伝えています。

Sweet Ribbonホームページ http://michiyokumabe.com/

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