「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」をご存知だろうか。お菓子・ケーキが好きな方なら一度は聞いたことがあるであろう、2年に一度、世界各地から代表が集まりフランス・リヨンで開催されるお菓子のコンクールのことだ。今やたくさんのお菓子に係るコンクールが開催されているが、その中でも世界最高峰のコンクールと注目されている。「お菓子のオリンピック」と言えばわかりやすいかもしれない。
2015年1月に開催された第14回大会に、日本代表チームの一員として世界の勝負に挑んだ徳永純司さん。見事準優勝に輝いたその雄姿は、TBSテレビ番組「情熱大陸」でも放送された。大会まで苦労された様子や試合中の緊張感が画面から伝わってきて手に汗を握る、まさにオリンピックがそこにはあった。
「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」概要
●出場国数:21ヵ国(2015年 第14回大会)
●チーム編成:1チーム3名
●競技時間:6:30~16:30 10時間
●競技課題・評価基準
<ピエスモンテ>
アメ細工、チョコレート細工、氷彫刻
<味覚審査>
・アントルメ・ショコラ(チョコレートケーキ)
・アントルメ・グラッセ(アイスクリームやシャーベットを使ったケーキ)
・アシェット・デセール(皿盛りのデザート)
<作業点>
チームワーク、衛生、時間管理、材料など
<プレゼンテーション>
芸術性、テーマ性
4度目の挑戦で念願の日本代表となり、憧れの舞台に立った徳永シェフ。チョコレート細工のピエスモンテとアシェット・デセールを担当、競技時間10時間という長時間の戦いを、なんと体重49kgで臨むことになった。
徳永シェフ:
「日本代表という重圧が大きく、とてつもないプレッシャーを抱え込んでしまい、準備期間や練習中はあまり食事が喉を通りませんでした。特に3名1チームなので、みんなの足を引っ張ってはいけないという気持ちが強く、更にプレッシャーに輪をかけたのだと思います。競技前、空港で荷物用の計量器に乗ったら、49kgだったんですよ。服を着ていたので実際にはもっと少なかったのかなぁ(笑)でも、やっとこの舞台に立てた!というものすごい感動があったんです」
しかしその感動も束の間、競技開始直後に思いもよらぬトラブルが日本チームを襲った。チョコレートのテンパリングマシーンが故障し、温度管理ができていないことに徳永シェフは気付く。
急遽、手作業のテンパリングに切り替えたものの、すでに一部の型にはチョコレートを流してしまっていて、そのチョコレートに大きなひび割れができていた。ピエスの完成が危ぶまれ、絶対絶命の危機。
徳永シェフ:
「あまりのピンチに愕然となりました。自分が足を引っ張ってしまったと、動揺を隠しきれませんでした」
長い間、この大会を目標として打ち込んできただけに、かなりのショックだったことが想像できる。実際、テレビ番組の映像も徳永シェフの険しい表情を捉えていた。
そんな中でもひび割れたチョコレートの補強をし、なんとか制限時間内に完成できたのはチームメイトが声をかけ続けてくれたおかげだと話す徳永シェフ。プレゼンテーション力とアントルメの完成度が高かったイタリアチームには及ばず、惜しくも準優勝となったものの、トラブルに見舞われながらもチーム力で戦った日本チームは高く評価されている。
徳永シェフ:
「準優勝という結果は正直ショックでしたが、最高のメンバーに恵まれ、力を合わせて頑張れたのでよかったです」
テレビ番組のおかげか、放送直後は電車で声をかけられたり、レストランで隣の席の人に話かけられたりすることもあったそう。職場では一目置かれるようになり、働きやすい環境になったかなぁ、と徳永シェフは笑った。
- Interview vol.2 へ続く -
プロの仕事vol.20 徳永純司シェフ インタビューvol.1
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