腕がいいといわれるパティシエには、職人の緻密さとアーティストのクリエイティビティの両方の素質がある。そして、才能だけでなく、たゆまぬ努力も必要といえるだろう。そのことを再認識させてくれたのが『パティスリー ユウ ササゲ』の捧雄介シェフだ。
自身が明言するように、捧シェフの生み出すお菓子は、フランス菓子の伝統を守りつつ、独自のエッセンスを加えた唯一無二のもの。クラシックな技と現代的な表現をバランスよく組み合わせ、アレンジの程度に関わらず、捧シェフの手にかかるとハッとするほど美味しく生まれ変わる。
たとえば、今回レシピを披露してくれたフィナンシェ。シェフが最初に修業をした「ルコント」で出合ったものを受け継ぎながら、さらにじっくり熱した焦がしバターを使って風味を強くしている。焼く前の生地を温かくすることで、焼き上がりは表面がこんもりと盛り上がり、食感はとてもやわらか。本来、“金塊”を意味するフィナンシェは小さい面を上に置くが、シェフのレシピでは型に生地を流し込んだままの向き、つまり盛り上がった大きい面を上にして並べている。