厳しい修業時代を過ごした捧シェフだが、自分の仕事は時間内で終え、就業時間が終わるとすぐに帰っていたそうだ。たいして練習もしていなかったとはにわかに信じがたいが、それはやはり、捧シェフがお菓子作りの特別な才能やセンスの持ち主だからではないだろうか?そう問いかけると強く否定し、こう話してくれた。
「僕が人と違うところは“よく見ている”ということ。人間観察をよくする、それが唯一だと思います。人の動きを見て、それを頭の中に入れて、再現するのが得意。それも、写真のように特定のシーンを切り取るのではなく動画で覚える。見た動きを脳内に録画して、それを再生・停止するイメージですね」
「何かを生み出すときって、自分の中にあるものじゃないと形にできない。頭に蓄積された情報の点が線でつながって、いくつかのパターンができて、その引き出しから必要なもの取り出す。それを組み合わせて新しいものを生み出す感じです。
もうひとつは反骨心。僕は人にあれこれ言われるのがめっちゃ嫌い(笑)。『そんなこともできないの?』とか『それ違うだろ?』とか、そういうことを言わせないようによく見ていて、何か言われる前にできるようにしておきます」