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Interview vol.2
街場とホテルの違いとは…?

「ホテルに行ったことで人生が変わった」と話す菊地シェフ。その経験をもっと詳しく話してくれた。

街場とホテルの大きな違いのひとつは、ホテルのお客さんがバラエティに富んでいるということ。宿泊客をはじめ、ウェディング、宴会、会議で利用する人、またランチビュッフェのお客さんなどがいて、各ゲストの用途にふさわしいデザートを、時間通りに、必要な数だけ、最高の品質で提供しなければならない。しかも、客数やイベント内容は日々変わる。ホテルの仕事は実に幅が広く、複雑なのだ。

菊地シェフ:

朝はレストランの朝食のパンを用意して、ブティック(ショップ)用のケーキを仕上げながら、結婚式の準備を進めて、ランチビュッフェにアフタヌーンティーの準備、そしてルームサービスなどなど……。どれも同時進行で、それが夜まで行われます。

ウェディングはコースなので、ウェディングケーキを出したら口直しのソルベ(シャーベット)を提供し、ミニャルディーズ、デセール……と続く。頭が良くないとついていけません(笑)

その上、ハイアットのメニューチェンジのスパンは短く、レストラン、ラウンジ、宴会場では1か月に1回や、多ければ2週間に1回も変わるそうだ。なおかつ外資系ホテルのため、結果も求められる。

そこで、必要だったのは「合理化」。ハイアットでは、自分達で作るものと、レディメイド(※既製品)のものを巧みに使い分けていたという。

菊地シェフ:

街場のケーキ屋ではほぼ自前のため、ホテルに入った当初はその考えには否定的でした。でも、実際に経験してみて、時には合理化も必要だと理解できた。そして、それが今に生きています。

単品勝負でいくなら全部自分で作るのもいいですが、外から取り入れたものを自分でもっとおいしく作り直すことで、さらに上のサービスを提供することができます。また、ホテルの仕事を通じて、複数の業務を把握しながら、臨機応変に対応する力が身につき、時間の感覚にも強くなりましたね。

僕が今、自分のお店をやりながら、百貨店の催事やイベントも同時にコントロールできるのは、こういった経験のおかげだと思っています。

ハイアットでは、コンクールへの参加にも好意的だった。以前から常に技術を磨くことに熱心で、休みを返上して数々のコンクールへ参加し、優勝・入賞を果たしていた菊地シェフ。やるからには日本一になりたいと練習を重ねて、2006年には国内最大の洋菓子コンテスト「ジャパン・ケーキショー」で優勝を飾った。

こうして目標を達成した後に海外へも渡り、シンガポールの『グランドハイアット・シンガポール』、フランスの『パークハイアット・パリ・ヴァンドーム』で腕を磨いた。

菊地シェフ:

シンガポールは、スタッフの仲が良くて、就業時間が終わったらみんなすぐに帰っちゃって、機材はボロボロなんだけど、最新の技術は取り入れている、そんな環境でした。

年配の人は中国語か英語しか話せないんですけど、若い人はほとんどが英語、中国語、マレー語ができて、さらにプラスで韓国語やスペイン語を話せたことが衝撃でした。言葉はコミュニケーション手段なので、複数言語を話せるのは圧倒的に有利。フランスでもそうでしたが、言葉で意思疎通できれば仕事ができなくても上に立てますし、仕事できても周りに指示ができなければ上のポジションには就けません。

もし日本人が何か国語も話せるような教育を受けていたら、あらゆるジャンルでトップレベルの人材になれたでしょうね。でも、話せないからこそ、存在価値の証明として、日本人は技術を磨いてきたのかもしれません。

一方、フランス独自のキャリア形成制度にも感銘を受けたそう。フランスでの義務教育は16歳まで。この年で、進学して勉強を続けるか、就労するかを決める。フランスの職人は、20歳でも4年のキャリアを持っていることになる。

菊地シェフ:

24~5歳でシェフパティシエを務めている人もたくさんいて、彼らで8~9年のキャリア。一日の労働時間は7時間なので、日本よりも短いですけどね。

僕が29歳でフランスに行ったとき、同じレベルの技術を持った人はみんな年下。早くからキャリアをスタートして、2ツ星や3ツ星といった有名なパティスリーで、能力のある人の下で仕事を覚えるわけですから、そんな環境で修行ができたら強いですよね。

- Interview vol.3 へ続く -

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