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Interview vol.1
可愛いルックスと
計算し尽くされた美味しさで
ハートを鷲掴みにする「ミニャルディーズ」

“ケーキは特別な食べ物”という人は多いはず。お祝い事や季節のイベントに欠かせないのはもちろん、ここぞという時のギフトの定番でもある。贈り物として、雑誌「anan」の『手みやげ大賞2016』のグランプリに選ばれたのが、UN GRAIN(アン グラン)のミニャルディーズだ。

「ミニャルディーズ」はフランス語で“上品さ、可憐さ”という意味を持つ甘いお菓子のこと。UN GRAINでは小さなサイズのお菓子を総称してこう呼んでいる。小ぶりでつやつやと美しいケーキがショーケースに並ぶ姿は圧巻で、まずは見た目でハートを撃ち抜かれる。

金井シェフ:

「ギフトの需要もありますが、少しずついろんなものを食べたいお客様がたくさんお見えになります。お好みで選んでいただけるように、生菓子と半生菓子を常時約20種類、焼き菓子やコンフィズリーで約20種類並べています。割合としては女性が多いですが、男性のお客様も結構いらっしゃいますよ。パッケージのスタイリッシュさもご支持いただいています」

そう語るのはUN GRAINのシェフ・パティシエの金井史章さん。フランスと日本においてミシュランで星を獲得した数々のレストランで経験を積んだ実力者だ。著名デザイナーが手がけた持ち帰り用ボックスはお店のロゴ入りのシンプルな透明ケース。4~5cm四方に統一されたミニャルディーズを並べ、ショーケースのようにして持ち歩くことができる。センスが問われる手みやげのNo.1に選ばれるだけあり、細部までこだわりが見られる。

金井シェフ:

「2015年11月にオープンして、おかげさまで1年足らずで大賞に選んでいただきました。でも、立地の面からいって当店をご存知でない方もいらっしゃいますので、もっと認知度を上げていきたいと思っています」

UN GRAINは老舗洋菓子メーカーのヨックモックが展開する別ブランド。金井シェフはお店の立ち上げから参加し、商品開発はもちろん、店舗の物件探しにも関わった。南青山の骨董通りを少し入ったあたりに位置し、センスのいいお店が立ち並ぶエリア。最寄駅から少し距離はあるが、繁華街ではなく本物志向の人たちが集まるこの場所を選んだのだという。

新店オープンにあたり白羽の矢が立った金井シェフは、当時、デュカス・グループのビストロ「ブノア」のシェフ・パティシエ。レストランで4年働き、将来の目標とする独立の前にもう一度ブティックで働こうかと考えていた時期だった。

金井シェフ:

「最初に『小さいケーキの専門店です』って話を聞いたとき、面白いなと思いました。小さなお菓子はすでにいろいろありますが、標準サイズのものと比べて味や構成が簡素化してしまっているものが多いんです。でも、それではこれからの世界では戦えないですし、小さくても1個1個のケーキにきちんと想いやストーリーを込めたかった。

前職を退職した翌月にシェフ・パティシエに就任して試作を始めましたが、パーツを小さくすればできるだろうと思っていたのに実際作ってみたら全然バランスがとれなくて。一度、常識やイメージをまっさらにしてから構築する必要がありました。今までのお菓子作りとは違いましたね。

プティフールだと世界観が出し切れず、1辺4~5cm四方というサイズをお店の基準にさせてもらいました。納得できる表現ができるギリギリの大きさ。ミリ単位の戦いでしたね」

“一般的なサイズのケーキをそのまま縮小するのではなく、このサイズだからこそお伝えできる美味しさのバランスを徹底的に追求しました”というUN GRAINのミニャルディーズ。いったいどんな特徴があるのだろうか?

金井シェフ:

「たとえば香りや食感の強さ。ホールだと食べられないけれど、この大きさだから美味しいっていうサイズ感ですね。オープンのときから提供している『トゥ タン ショコラ』はチョコレートをとことん追及し、味や食感の濃淡を表現したケーキなんですが、そういう力強さ。普通のケーキにはないサイズを利用した攻め方、表現の仕方ですね。ある程度挑戦的なものをやっても少量だからOKなんです。

逆に一瞬の口どけを楽しんでもらって、“あぁ美味しかった、もう一個食べたい”って思わせるものもあります。ミニャルディーは、同時にほぼすべてのパーツを口に入れられるのもいいんですよ。普通サイズのケーキのように、真ん中は美味しいけど端っこは飽きちゃった、なんてこともありません」

当初の想定よりもオープンまでの準備期間が長かったのは、ブランドコンセプトに合わせ、物件も妥協できなかったため。理想の環境はなかなか整わなかった。

金井シェフ:

「その頃の僕は、前職の『ブノア』でいくつかのメディアに出していただいて、パティシエとしてやっと名前が出てきたころでした。新店の準備期間が半年くらいだったら、名前が消えることもないかな、だったらいいステップになるなって思っていたんです。

でも、想定よりかなり長い時間、まるで極秘プロジェクトで地下の研究室に閉じ込められているような感じで(笑)、試作や店舗運営の準備をしていました。会社勤めの人の時間軸と、僕たち職人の時間軸は全然違います。1年経って、そのプロジェクトがうまくいったどうかを検証して、次にどう修正するのかを決める会社員たちに対して、僕たちの1年は“積み重ね”。この1年があって次の1年にどう向かうかを決め、キャリアを重ねていく。だから、表に何も出せない準備期間は少し長かったですね」



2015年秋、満を持してオープンしたUN GRAINは、明確で魅力的なコンセプトと商品構成が支持され、数々のメディアに取り上げられた。オープンから一年半以上が経つ現在も取材の依頼が絶えない人気店の仲間入りをした。

人々を飽きさせないため、おおよそ季節ごとに新作を発表、店内のイートインスペースではワンプレートデザートが提供されるほか、不定期で開催されるシェフズカウンターではシェフとの会話を楽しみながら旬の素材を使ったデザートコースを堪能できるなど、さまざまな楽しみ方を提案し続けている。

- Interview vol.2 へ続く -

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