島田徹シェフの師匠は、最初に師事したA.ルコント氏、フランス修行時代に多大なる影響を受けたピエール・エルメ氏、そして帰国してから同じ店を切り盛りする父・島田進氏だ。その3名に共通しているのはスペシャリテを持っていること。その3人の偉大なるシェフから徹シェフは何を学んだのだろうか。
日本に本物のフランス菓子を伝えたルコント氏からは、フランスの伝統的な味を徹底的に学ぶ。エルメ氏からはお菓子にストーリーがあることを学んだ。食べるシチュエーションや素材選びにも物語があり、食べるものとしてのお菓子にプラスアルファの魅力を与えたのはエルメ氏だ。進氏は同じ商圏で同じお菓子で3回も成功を収めた誰もが認める日本を代表する名パティシエ。長くフランス人と仕事をしてきたことで、本物のフランス菓子を知っていると同時に、日本人の好みも熟知していたのは進氏だ。
「ムッシュ・エルメのような世界的なフランス人パティシエは、本国で提供しているものをそのまま日本に持ってくることを期待される。基本的に直球・直訳なんです。でも、僕ら日本人パティシエが作るものは意訳。材料の制約や日本人の好みもあるから、そのお菓子の良さがうまく伝わるようにアレンジしようとします。ルコントさんは日本のローカルルールに合わせてきたフランス人で、そのシェフと試行錯誤しながら一緒に働いてきた父は、日本人に受け入れられやすいフランス菓子を一番知っている人とも言えますね」