徹シェフは今年不惑の40歳。その少し上の世代とは修業時代の生活環境に大きな違いがあったという。それはインターネットの存在だ。徹シェフはパソコン持参でフランスに渡ったが、現在40代後半以上のシェフたちの修業時代にはネットも携帯電話もなかった。父・進氏はフランスでの修業時代、日本人同士で時々集まっては顔を合わせて情報交換していたそうだ。弟子入りするのも手紙でお願いするか、アポイントなしで直談判。現代は便利なツールがあるので恵まれているが、その分今まで以上に結果も求められるという側面もある。
インターネットの出現は、プロと一般人の差も縮めた。レシピは無料で簡単に手に入り、技術的なことを教えてくれる動画も山ほどある。時には自由な時間がたっぷりある一般ユーザーの方が材料について詳しいことも。
「僕たちはプロとして、総合力でその上を行かなければならない。そのためにも絶えず勉強が必要です。ただし、情報を追うだけの人たちは知識と実体験が比例していないことが多いんです。どこの何が美味しいはよく知ってるんだけど、実際に食べた回数が圧倒的に足りない。ヨーロッパにはチョコレートの種類がたくさんあって、みんな小さい頃から散々食べているから自分の好みの銘柄が決まっています。でも、見聞きした情報から選ぶ人は、試しに一度食べても、繰り返しの購買にはつながらない。食べ続けることで好きになったり、自分の好みがわかってくると僕は考えています」